2025年シーズン、クラブ史上初めて全国リーグである日本フットボールリーグ(JFL)に参戦している飛鳥FC。全30節で行われるリーグ戦は、折り返しを過ぎた18節までを消化し、現在は1か月の中断期間に入っている。2勝7敗9分の成績で16位につけている飛鳥FCのリーグ再開初戦は、8月30日(土)に橿原公苑陸上競技場で開催されるブリオベッカ浦安・市川とのホームゲーム。後半戦を占う重要な一戦を前に、飛鳥FCの前半戦の戦いぶりをレポートする。
飛鳥FC は昨年、2021年からチームを率いる美濃部直彦監督の下、全国地域チャンピオンズリーグを勝ち抜き、悲願のJFL昇格を果たした。初めて挑むアマチュア最高峰の舞台で待ち受けるのは百戦錬磨のアマチュアの雄や、J3リーグから降格してきたプロクラブなど、強豪チームばかり。美濃部監督がシーズンに入る前に「一番弱いチームだと自覚した上で、自分たちの力がJFLの中でどれぐらい通用するか試したい」と宣言。精力的なオフシーズンを送って、3月の開幕戦を迎えた。


開幕戦は昨年リーグ3位に入っている強豪・FCティアモ枚方とのアウェイゲーム。先制されながらも、前半終了間際にMF清川流石選手によるチームにとっての記念すべきJFL初ゴールで同点に追いついた。後半に突き放され、1-2で敗れたものの、やれるという手応えを選手たちも感じる試合となった。
続く第2節では、橿原陸上競技場でのホーム開幕戦にヴィアティン三重を迎えた。アウェイサポーターも大挙として駆けつけたゲームで、飛鳥FCは互角の戦いを演じる。前節と比べて守備的なシステムに変更し、相手の攻撃力を封じながらカウンターを狙う意図通りに試合を運んだが、最後は後半33分に味方ゴール前の混戦の中から押し込まれて失点。試合後、美濃部監督は悔しい敗戦を「ここで自信をなくすのではなく、もっともっと自信を持って戦えるように、練習からやっていきたい」と振り返っている。


続く第3節・レイラック滋賀戦も1-2で惜敗。上位カテゴリーの中でも戦えるという手応えを得ながらも、一方でそれがあと一歩のところで結果に結びつかないもどかしい戦いが続く。3月後半の第4節では、横河武蔵野FCを相手に0-0のスコアレスドローに持ち込み、JFL初勝ち点を獲得したが、その後の4月の3試合は1分2敗。2敗はどちらも0-1で敗れるという悔しい試合内容だった。
苦戦が続く飛鳥FCに歓喜の瞬間が訪れたのは、第8節のいわてグルージャ盛岡戦。子供連れも多く見られたゴールデンウィーク中のホームゲーム(橿原陸上競技場)で、選手たちが躍動した。今季初めて3-5-2のフォーメーションを採用。前線の数を普段よりも増やし、前からの守備の意識を強めた上で、攻勢に出た。一進一退の攻防の中、試合が動いたのは後半32分。途中投入されたFW中井崇仁選手の美しいミドルシュートで先制。虎の子の1点を守り切り、ホームのサポーターに待望の初勝利を届けた。


ただし試合後に美濃部監督が「内容的には自信を持って次もいけますといえる内容ではない。気を引き締めてやらないといけない」と語った通り、試練の時は続く。第9節ブリオベッカ浦安・市川からは4連敗。第11節では過去10度のリーグ優勝を誇る強豪・HondaFCに、前半5分に先制しながら逆転負け。力の差を見せつけられることとなった。ポジティブだったのはそのいずれもが1点差での敗戦だったこと。第9節では初めて複数得点するなど、少しずつではあるが、守備と攻撃の歯車がかみ合う試合が増え始める。
第13節クリアソン新宿戦(橿陸)では、DFラインからのロングボールを、見事なワンタッチシュートで合わせたFW甲元大成選手のゴールを守り抜き、念願の2勝目。続く第14節からは5戦連続ドローで勝ち点を拾い、6戦無敗で、中断期間へと突入している。


今季の飛鳥FCは対戦相手によってフォーメーションを柔軟に組み替えて、攻守両面で相手のストロングポイントを抑えるサッカーを目指してきた。失点数はリーグ4位タイとなる17に抑え、守備面では一定の効果を発揮。DFリーダーのDF大倉康輝選手も「結果はついてきてないけど、良いサッカーは出来ていると思っています」と手ごたえを口にした。一方で得点数はリーグ15位の10と伸び悩んだ。今後、より勝ち点を積み上げていく為には、攻撃面での更なる進化が求められることとなる。




中断期間には、ここまで主軸を担ってきた選手がチームを離れた一方で、頼もしい新戦力が複数加わった。J2今治からは21歳のゲームメーカー、佐藤璃樹選手が加入。豊富な運動量と正確なパスで 中盤に新たな風を吹き込んでくれるだろう。一方DF陣にはJFLレイラック滋賀から平井駿助選手が加入した。JFLでのプレー経験も豊富なセンターバックは、飛鳥FCの堅守を更に強固なものにしてくれる。他にも、東海サッカーリーグ1部wyvernからはかつて東北リーグや中国リーグで得点王に輝いたストライカー・高橋佳選手、大森FC(東京都2部)からはGKの八井田舜選手が加入。新たな仲間たちを加えて、後半戦へと臨む。
リーグ再開初戦は、ホームゲームから。橿原公苑陸上競技場で4連勝中と勢いにのる現在6位のブリオベッカ浦安・市川を迎え撃つ。11月23日の最終節まで残すところ12試合。JFL残留、そしてチームが目標と掲げる10位以内へ—。後半戦での巻き返しへ向け、奮闘を見せる選手たちをぜひスタジアムで後押ししてほしい。
(文責:Tatsuya Umemoto スポーツライター)
